楽器のせいじゃないよ。本人の問題だよ。
結局は練習量がモノを言うんだよね!という、全然ゆるふわじゃない結論に、皆があははと笑う。
茨城に越してきて出会ったママ友に、ウクレレサークルを紹介してもらった。月に一回、子育て支援のNPOを営む事務所に集まり、ウクレレを教わる。
来るのは大体、子ども連れのママだ。事務所には貸出用のおもちゃが沢山あるので、次男が一緒でも周りに遠慮することなく過ごせる。
ウクレレを弾こうとして膝に乗られたら、それとなく「あ、あのトーマス楽しそうじゃない?」と気を逸らしたりして、月イチの自分のための時間を楽しむ。
前から弾けはしたけど、持ち方や弦のはじき方を習うと、ウクレレの腕が一気に上がった。弾ける曲やストローク(弦をジャカジャカするアレ)の種類も増えた。
少しのことにも先達はあらまほしきことなり、徒然草の一節が浮かぶ。早く習いに行っておけば良かったな。
ウクレレサークルの主催さんは、ウクレレにドラム、リコーダーと色んな楽器を演奏されている。また、ママ中心の吹奏楽チームをはじめ、ビッグバンドにコピーバンド、リコーダーカルテットと活動場所も様々。
「そんなにやってて、練習間に合うんですか?」ある時訊いてみた。私より大分年上で、いつも笑顔でハツラツとしているその方は、うーん、と考えて答えた。
「どこで何の曲やってるか、ごちゃごちゃになる時はあるけどね。でもやってたら思い出すよね。で、やっぱり練習してないとダメだわ、ねえ?」
周りにいた、リコーダーカルテットのお仲間さんに話を振る。
「え?まあね。ほら、私たちがよく吹く、ピタゴラスイッチの曲。あれも実は結構大変なのよ」
お仲間さんの女性は、ソプラノリコーダーを吹いている。大抵メロディーを受け持つ楽器なので、指遣いやらタンギングやら、ただでさえ忙しない。そして、ピタゴラスイッチは私も吹いてみたことがあるから分かる。可愛いくせに難しい。
「あれをさ、栗コーダーカルテットは涼しい顔してやってるから。さすがプロだよねー」
栗コーダーカルテットは、ピタゴラスイッチの楽曲をいくつか担当しているプロの演奏家。たまにコンサートもしていて、一度茨城に来て演奏を指導してくれたことがあるらしい。
「いい値段の楽器だとそれなりの音も出るけど、やっぱり吹き方なんだって。小学校で買わされるリコーダーでも、上手く吹けばだいぶ高い音が出せるのよ」
「そうなんですか!あれはてっきり、素材が悪いんだとか、安いからだとか、そう思ってました」
私は完全に楽器のせいにしていた。木製のリコーダーなら、もっといい音出せるはず、なんて考えていた。
ソプラノリコーダー奏者の方が、あははと笑いながら言う。
「いやね、練習なのよ!出すぞー!って気合いとね、押さえ方と、タンギング。」
「だってあなた、だいぶ上手くなったものねえ。グループ組んだ最初の頃は指も動かなくて、付いてくので必死だったもんねえ」
たくさんの団体を駆け回る、ウクレレサークルの主催さんが言う。そして私の方に向き直り、ひと言
「さあ、だから練習です」と言い放った。
みんな、結局そうだよねぇ…と若干諦め顔で笑った。
この、ゆるっともふわっともしてない、リアリティのあるウクレレサークルが、私は好きだ。トーマスプラレールに夢中な次男を横目に、ウクレレを構えて「ジングルベル」を弾き始めた。
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