経験してないものは、語れない。
気温の話題から、そんなワードが浮かんできた。
全国的に、今年は暖冬らしい。
ここ茨城も、確か去年の今頃はもっと寒かった気がする。車のフロントガラスは凍り、家の窓は毎朝結露し、吐く息が白いなあ!なんて興奮も三日で冷めるくらい、毎日毎日寒くてたまらなかった。今年はまだ、フロントガラス凍った事件に、一度しか遭遇してない。やっぱり去年より暖かいのね。
故郷沖縄も、やっと気温が14度まで下がってきたらしい。いやー、寒くなったな!と感じる。
ここ茨城で「気温14度」の予報を見たのは、いつ頃だったろう。10月くらいから、最低気温がそれくらいになり出したかな。
茨城に引っ越して、初めて迎えた去年の冬。「寒いでしょう?」と数えきれないくらい聞かれた。「いやー!たまらなく寒いですね!」と言い飽きて、なんか違う言い方はないもんかと悩んだほど、いろんな人に聞かれた。
車のナンバーが沖縄のままだから、駐車場の係のおじちゃんにも「え?あんた沖縄から来たの?いやー、こっちは寒いっしょ?」って聞かれて、うんざりだった。おじちゃんごめんね。
関西に住む友達とzoomをしてた時、寒くて大変なんだよー、と私が話すと、彼女から「なっちゃん、冬は寒いもんだぜ」と返事が来た。そうよね。冬は寒い。当たり前。
でも、ほぼ一年半袖で過ごせる沖縄県で生きてきた人間からしたら、17度を切ったあたりから後は全部「寒い!」になるのよ。どう寒い?とかないの。寒いです、の一択しかないの。
そう。寒さを経験してないから、私には寒さを語る言葉がない。とにかく寒いんです、ただそれだけ。
逆に、暑さならいろんな言い回しを思いつく。蒸し蒸しした暑さ、焼け付くような暑さ、太陽が刺してくるような暑さ。
砂浜の上を裸足で歩けないような暑さ。ぐったりするほど暑い。今日は耐えられそうなくらいの暑さだね。色んな「暑さ」を思い浮かべながら、眩しくて目を開けていられない、ギラギラした沖縄の夏の光景が、脳裏に蘇る。
ふと気づく。
経験してないものは語れないんだな。
去年の私が寒さの言い回しに困ったのは、寒い場所で暮らす経験が少ないんだから、当然のことだったんだ。自分の中で納得できる結論が出てきて、スッキリした。
流れで、なかなか自分の思いを言葉にできずに困っていた、今まで出会ったクラスの子どもたちを思い出した。
あの子達にも、経験が足りなかったのかも知れない。読書の経験かも知れないし、自分の気持ちを話す機会に恵まれなかったのかも知れない。
いろんな経験をさせよう、よく聞く言葉だけど、改めてその大切さを実感した。自分自身で経験したものしか、人は語れないのだ。
改めて、わが子にもいろんな経験させてあげようと思った。ネガティブな経験や、めんどくさいことはさせたくないなと逃げがちだったけど、そういうものも全部、子ども達の糧になるんだな。
数年後には、いろんなバリエーションで「寒さ」を語れるようになるんだろうか。ちょっぴり寂しいような。でもそれは、私の人生経験が増えたってことだね。
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