相手の痛みを、自分ごとのように感じられる。優しくて猛者な男の子との思い出

教育

「先生、あの時は給食、食べられなくしちゃってごめんなさい。」

想定外のメッセージ。思わず目を丸くして驚いてしまいました。

たった一度の、あの出来事を、彼はずっと気に病んでたんだ。

いつもムスッとしてて、伝え下手で、でも根は優しい彼からもらった寄せ書きを、私はずっと大事にしまっています。

ある年、私は小学校で支援員の仕事をしていました。

「どうしても教室にいられなくて、走って飛び出して行ってしまう。その子の側にいて、安全確認をしてもらいたい」とのことでした。

その子は女の子。その日の気分で調子がコロコロと変わる子でした。

ニコニコ機嫌がいい日もあるけど、朝から暴言を吐いていたり、友達を蹴飛ばしてしまってる日もある。朝、学校に行ってみないと、その日の予定が立たない。

授業中、急に校内でかくれんぼを始めたり、怒りが頂点に達した時は、泣きながら彼女の家へ逃げ帰ったことも。

まるでジェットコースターに乗ってるような毎日。とにかく大怪我だけはさせないよう、ハラハラしながら、日々彼女と接していました。

そんな気性の荒い彼女だけど、遊ぶ友達がいっぱいいる。正直意外でした。

勝負ごとで負けたらキレることもあったけど、基本遊び上手。運動も得意。なので休み時間は「おーい、遊ぼうぜー」とよく男子に呼ばれて、運動場へ出て行っていました。

そんな遊び仲間の1人に、年中半袖半ズボンの男の子がいました。

当時働いていた小学校は、栃木県にあったので、冬の朝なんかは気温が一桁になっちゃうような寒さ。周囲の子もマフラーに手袋をして登校している中、彼だけずっと半袖半ズボン。

この寒さで?

猛者だな。

心の中で私は、彼を「猛者」と呼んでいました。

猛者な彼は給食が大好き。毎日おかわりするし、食べるのも早い!

毎日一緒に行動している彼女も、給食の時間は落ち着いていました。なので、私もクラスの中を転々としながら、別なお友達や、猛者の子とも一緒に、給食を食べていました。

ところがある日の給食中。

猛者な彼が、彼女を怒らせてしまったのです。

彼女は「うるせえ!」と叫び、ドン!と机を叩いて、廊下へ出て行ってしまいました。私も慌てて追いかけます。

結局、給食時間には彼女の怒りが収まらなくて、教室には戻れませんでした。

お掃除が終わり(基本お掃除がキライなのでいつも逃げている)、昼休みの頃にようやく「遊んでくる」と運動場に出て行った彼女。

私は職員室で、状況報告をした後、担任の先生が運んでくれた、給食の残りをいただきました。

そう。何も考えず。校庭で遊ぶ彼女の背中を確認しながら、その日出ていたパン…半分食べかけて、彼女は飛び出したんだった…を、口に頬張っていました。

9月から1月まで。仕事の期間が決まっていたので、1月の半ばに私は学校を去ることになりました。

担任の先生が、クラスのみんなと一緒に寄せ書きを作ってくれ。「うわー、ありがとう!」と中を見ていて、ふと目に留まった言葉。

それが、「先生、あの時は給食、食べられなくしちゃってごめんなさい。」でした。

思わず猛者な彼に聞いてしまいました。「あのことずっと気にしてたの?」

彼は小さい声で恥ずかしそうに、「だってさ、全部食べられなかったし、お腹空いただろうなって思って…。」とだけ、返してくれました。

途中でお昼を食べられなくしてしまった。給食大好きな彼にとっては、私たちが思う以上に、申し訳なさを感じてたんですね。

担任の先生も、「実はずっと気にしてたんですよ。なかなか口で伝えるのが上手じゃないんだけどね。彼、すごく優しい子なんだよね。」

寄せ書きを一緒に眺めながら、後で話してくれました。

相手の困り感を、自分のことのように感じられる、優しい彼。そんな彼の優しさに、私の気持ちもあったかくなりました。

たった4ヶ月のお付き合いだったけど、今もずっと忘れられない、優しくて猛者な彼との思い出です。今頃どんなイケメンに成長してるのかしら。

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