図書館の帰り、次男と神社を散歩した。
私が今住んでいるのは茨城県水戸市、黄門さまのお膝元。
といっても、大きな公園に像があったり、ゆるキャラのデザインに印籠とお髭が組み込まれてたり、ちょこっとその色が出てますよーくらいのものだけど。
そんな水戸徳川家の長、徳川斉昭が建てたという神社が、図書館の近くにあった。
落ち葉をふみふみ、砂利をふんづけ、次男はズンズン歩く。
ずんずん。
あのテーマが頭の中に流れてきた。
じーんせい、らくありゃ、くーもあるさー
子ども達はもちろん知らない。二十歳くらいの若い世代も知らないだろう、時代劇「水戸黄門」のテーマ曲。
そこからなぜか思い出したエピソード。
水戸黄門、コスプレみたい。って流れで思いついたのかな。
スタートから破天荒
小学校の先生一年目。
その年ご一緒した学年主任は、他の先生から「真似したらだめよ」と密かに耳打ちされたほど、破天荒な方だった。
悪い先生、というわけじゃない。
やる事に芯が通ってて、いつも子どもの事を考えてくれて、とっても素敵。
だけど全てが規格外なので、新人のあなたが真似しようとしたら潰れるよ。
そんな意味で他の先生が釘を刺してくれたのだと思う。
そんな主任とご一緒した4月の学年開き。新しいクラスになった子ども達と挨拶をしたり、学年の先生方を紹介する場だ。
そこで主任は言った。
「一発芸をしましょう」
へ?真っ青になった。
初めて担任を持つというだけでいっぱいいっぱいの私。顔だけ引きつって、何にも思いつかなかった。
そもそも私は学校の先生をしに来たのに?芸をしに来たんじゃないんだけど…
主任は傘を1本持ってきて、歌謡曲を歌い出した。「こーいはぁ、わたしのこーいはぁ、そーらーをこーえーて、もーえーたーよー」
これ確かすごく古い曲…
傘をステッキがわりにしてブンブン振りながら、お尻も振りながら歌い踊る。子どもたちは、大爆笑。
続いて同い年の男性の先生が出てくる。当時流行っていた、いっこく堂のものまねをする。
「あれ、声が、遅れて、聞こえるよ」
これまた大爆笑。
ハードルが高すぎる。
結局、何も思い浮かばなかった私は、とにかく大きな声を出して挨拶した。錦鯉の「こーんにーちはー」みたいな。
子ども達は若干笑ってくれたけど、「この人は何にも出来なさそう」みたいな空気が流れた。だってこんなん、準備なんかしてないもん…
最後の先生もさすが(?)ベテラン。しっかりみんな笑わせて場を締めた。
全然違う方向に意気消沈して、私は子どもたちとの出会いを迎えた。
一年生を迎える会で仮装大会
数週間後、一年生を迎える会の出し物を練習することになった。
主任とベテランの先生で、すでに出し物は決めてあった。
志村けんの「ウンジャラゲ」。
「恥ずかしがったらだめ!こんなしたら、一年生笑わないよー。全力でやるのよー!」
平成キッズが全力で、ウンジャラゲーのハンジャラゲーと踊り回っていた。
これで終わるわけもなく
「先生方、仮装しましょうね」と主任は言ってきた。
えーどうしよう…。ない知恵を振り絞り、私はクラスの子に体育着を借り、ビンメガネとアフロヘアでウンジャラゲを踊った。
若干一年生は怖がっていた。
当たり前が当たり前でない先生
あれこれとんでもない一年だったけど、おかげさまで私は先生のよくある「当たり前」に染まらず成長した。
学年が変わり、学校が変わるたびに「普通じゃない」発想が浮かぶ。すごいね、面白いねと言われる。
芸と仮装を教えてくれた先生のおかげです。…ちゃんとした事も教えたよ!と叱りながら、笑っていそう。
私の当たり前をぶっ壊してくれた主任は、数年前に「もう働くのはおしまい!」とスッパリ定年退職した。
実は今も連絡を取り、おしゃれなカフェでランチをご一緒する、素敵な人生の先輩です。
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