優しさの形はそれぞれだ。
例えば長男は見えやすい形で優しさをくれる。なんだかんだ言って、お手伝いをしてくれたり、次男と遊んでくれたりする。
夫のそれは分かりにくい。私には分かりにくいだけかも知れないけど。なので丁寧に行動の奥を見ていかないと、私を思ってしてくれたのかー、という事に気づけない。
そう。見えにくい優しさにも気がつける人でありたい。そんな彼を思い出しながら、書いてみよう。
支援員として入った、学校での出会い
栃木へ出て来て、一年間学校栄養士をした後のことだ。
履歴書を出し忘れた私は、慌てて雇用してくれる場所を探した。そんな探し方で出会った場所は、いわゆるブラックな職場。メンタルがボロボロになって辞めてしまった。
まあ、辞めてからすぐに通信制大学のスクーリングがあったから、良いタイミングだったと言えばそうかもしれない。
スクーリングが終わった後、私はまた仕事を探していた。たまたま見つけた、小学校の支援の仕事をさせてもらえることになった。
教室を飛び出してしまう女の子がいて、その子に付き添う業務をして欲しい、との事だった。
彼女は、その日の気分で調子が変わる。
ニコニコしてる日もあれば、朝から友達を張り飛ばして歩いている日もある。
急に校内でかくれんぼを始めたり、怒りが頂点に達した時は、泣きながら家へ逃げ帰った事もあった。
そんな激しい気性の彼女だけど、遊ぶお友達は意外に多かった。
勝負ごとでキレてケンカになる事も多かったけど、基本彼女は遊び上手。運動もよくできたし、明るい性格。そんな部分が好かれていたんだろう。
遊び仲間の中に、とある男の子がいた。
彼は年中、半袖半ズボンだった。
栃木の冬って、とんでもなく寒い。他の子達はマフラーに手袋みたいな出立ちなのに、彼だけずっと半袖半ズボン。
沖縄ではわりと見かけたスタイルだけど、この寒さでこの格好は猛者だなと思って眺めていた。
猛者な男の子は給食が大好きだった。
毎日必ずおかわりするし、食べるのも早い。
給食の時間だけは、彼女も落ち着いていた。なのでいろんなグループを回って、クラスの子たちと話ができた。
給食飛び出し事件勃発
ところがある日の給食中。
猛者な彼が、彼女を怒らせてしまったのだ。
彼女は泣きながら叫び、ダン!と机を叩いて廊下へ出ていってしまった。
慌てて追いかける。
結局彼女も私も、給食の時間内には教室へ帰れなかった。
彼女はそのまま機嫌が戻らず、「給食いらない!」と下校まで何も食べずに過ごした。
私は休み時間に、職員室に用意されていた給食を食べた。
担任の先生が持って来てくれていた。
給食、食べられなくしちゃってごめんなさい
任用期間が4カ月と決まっていたので、3学期の途中で子どもたちとお別れすることになった。
最後の日、担任の先生が色紙を用意してくれていた。中にはクラスのみんなからの一言メッセージが貼られていた。
給食大好き、猛者な彼のメッセージもあった。
こんなことが書かれていた。
「先生、あの時は給食、食べられなくしちゃって、ごめんなさい。」
彼の奥にある優しさ
あの時のこと、ずっと気にしてくれてたのか。正直驚いた。
彼の表立って見えない優しさは、担任の先生も分かっていた。
実は給食飛び出し事件の後すぐ、先生とこんな話をしたのだ。
「根っこは優しい子なんだよね。あの後、2人が出ていったのを気にして、落ち込んでたんだよ」
担任の先生の思いやりに、彼はどれだけ救われ、励まされたんだろう。
行動の奥の方まで見ようとする、そんな視点を忘れないようにしようと学ばされた出来事だ。
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