苦手やヘタは、あなたの武器だ。

教育

苦手やヘタクソは、改めて武器だなと思う。

できない人の悩みや困り感、しんどさに寄り添ってあげられるからだ。

こんな私が教えられるのかな

自分で言うのもなんですが、勉強はできる方だった。

知らない事を知り、できない事ができるようになる。

それが楽しくて仕方なかった。

ただ一つ、どんなに努力しても図工の成績は上がらなかった。

中学高校と、てんでダメだった。

おかげで「私は絵を描くのがヘタクソなんだ」という思い込みもガッチリ完成した。

初任の時は、研修代替の先生が図工を受け持ってくれていた。

だから次の年は、不安だった。

こんなに図工の成績が悪い人間が、子どもたちに教える事なんで出来るんだろうか。

とりあえず指導書だ。

学校の教科書には指導書が付いている。

ざっくり言うと、説明書のようなものだ。

こんなねらいがあって、こんな風に授業を組み立てていくと良いですよ、というのが書いてある。

先生用の机の後ろ。本棚をゴソゴソあさる。中から図画工作の指導書を見つけた。

そして驚いた。

めちゃくちゃキレイなのだ。

ヘタだからこそ、基礎基本

指導書は数年単位で同じものを使うから、大抵端が曲がっていたり、少し汚れていたりする。

そのクラスの先生が、それを使っていた跡が残る。

なのに図工の指導書だけピカピカだった。

箱づめになっている指導書セットを開ける。

中には、私が探していた指導書と、黒板に貼る指導用ポスター、カードが入っていた。

図工には鑑賞という授業があり、それに使うカードなんだろうが、こちらは封すら開けられてなかった。

なるほど。

図工の指導書って、みんな見ないんだ。

週に一度しか図工の授業がないからか。

教材研究しなくても出来るだろう。そう思うのか。

分からないけど、めちゃくちゃキレイな指導書を読みまくった。

鑑賞カードも開けてみた。なるほどトランプやカルタ、カードになってると楽しく遊べていいなー。

そして指導書どおりに授業を進めた。

国がチェックしたものだから、当たり前だけどキレイな流れ。子どもたちの思考も活動も、すーっと進む。

おかげさまで、つまづきポイントが見える

さらに面白かったというか、予想してない事が起きた。

子どもたちのつまづくであろうポイントが分かるのだ。

他の教科より、ピンと分かる。

なぜか。

私が図工が得意じゃないからだ。

例えば絵の具を使う時に、全部ペターッと濃い色で塗りつぶしてしまう子。

絵の具と水の量を調整すればいいんだけど、その方法を教わっていないから、分からない。

なのでそれを練習するシートを探してきて、絵の具で絵を描く前に、練習をした。

絵の具一色だけで、鳥の羽の色を塗り分ける。水は少なく、だんだん多く。

これだけなのに、完成品はとっても美しい鳥の絵になる。

鑑賞の授業。見て楽しもうと言われても、見るポイントが分からない。

じゃ、トランプみたいにひとつカードをひいて、それにタイトルを付けてみよう。 

なんでそのタイトルにしたか、ポイントも説明してね。

子どもたちがグループで伝えあう。

あー!そう見える!

そのタイトルは思いつかなかった。

とっつきにくい世界の名画や、アート作品が一気に身近になる。

なんだ。

図工ってこんなに自由で楽しい教科だったんだな。

上手く描けるかどうか、それを判断基準にしていた自分が、ガラガラ壊れていくようだった。

下手や苦手は、同じ悩みを持つ誰かを救う

一番不安に感じていた教科が、一番楽しくて好きな教科になった。

苦手やヘタクソは、改めて武器だなと思う。

もし私が図工の得意な人だったら、できない人悩みや困りごと、しんどい気持ちに寄り添えなかったかも知れない。

絵がヘタクソで良かったー。

上手い下手で評価されてきて、よかったー。

なんかひねくれた「よかった」だけどw

結果オーライだったので、本当に良かった。

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