中学1年。自分のクラスに馴染めないことがあった。
女子のグループから外され、そのままどこにも属せないまま、居場所がなくなってしまったのだ。
その時わたしを助けてくれたのは、違うクラスの友達だった。
部活が一緒の子と、その子の友達と。
休み時間のたびに遊びに行った。その子達も一緒にわいわい楽しんでくれた。
意地でも学校休んでなるものか、とは思っていたけど、その子達がいなかったら心が折れていたと思う。
人にはいろんな拠り所があっていい。
担任としては、クラスが心地良い場所であって欲しいし、そうなるよう工夫するけど、一番の友達が隣のクラスだったりしたら「学年の廊下」が拠り所だったりするだろう。
それでいい。
私も救われたし、あの男の子もそうだったし。
初任の年、クラスでザリガニを飼っていた。
たまたま捕まえた子がいて、それでなんとなか増えていって、みたいな感じだったと思う。
生き物がいた方が、なんとなく和むし。みたいな適当な理由もあった。
多い時には5匹くらいが水槽に入っていた。
そこまで世話は面倒じゃないけど、彼らは隙があればすぐ脱走する。
少しフタが空いてたせいで、1匹行方不明になり、次の日階段の踊り場に干からびて発見されたり、なんてことがあった。
「先生、あれはさー、水が多すぎたんだよね。ザリガニちゃん達が逃げないように工夫してあげなきゃー」
こんなアドバイスをくれる子がいた。
隣の隣のクラスの男の子。
彼は父親がアメリカ人で、薄茶色の目に色素の薄い髪の毛。
ウエンツ瑛士くんみたいな風貌のかっこいい子。
けど中身はおちゃけてるというか、抜けてるというか。憎めないような可愛らしさのある子だった。
彼は生き物が大好きだった。家にも変わった爬虫類を飼っていたはず。なんならウチのクラスの子よりも、ザリガニを愛でてくれていた。
外国人が日本語を話す時の、ちょっと変わったイントネーションで毎日ザリガニに話しかける。
「なんかこの子元気ないよー。脱皮するのかな」
「ビリーちゃん(勝手に名付けている)、またケンカしたの?ハサミ取れてるよー」
彼にわたしも楽しませてもらっていた。
自分のクラスの子でないのもあって、若干楽な気持ちで彼と付き合っていた。
実はクラスで少し浮いた存在だった。
何年か経ってから、担任の先生に聞いた。
「あからさまに無視とか、そんなんはないのよ。でも彼のテンションや生き物マニアな感じに、合わせて喋れる子があまりいなかったのよね。
心の奥底では、寂しかったかもなと思う。
だから先生のザリガニに癒されてただろうし、先生に可愛がってもらって救われてたと思うよ。」
彼は中学か高校の途中から、父親の故郷に帰り、アメリカで学び始めたらしい。
自由な雰囲気も合っていたんだろう。どんどん学力を身につけて、ついには夢だった獣医になったらしい。
ウチのザリガニも、ちょっと貢献してたんだろうか。
人にはいろんな拠り所があっていい。
学校の中だと、それがクラスっていう「枠」の中に限定されやすいし、そうしてしまいがちだ。
でも別にクラスだけが居場所じゃなくていいし、学校だけが居場所でなくてもいい。
大人は拠り所を自分でつくっていけるけど、子どもには難しいから。
いろんな場所があると伝えてあげる。
なるべく色々用意してあげる。
祖父母、隣のおじちゃんおばちゃん、それこそ学童さんとか、習い事だっていい。
あの日の彼を、私とザリガニちゃんが救ってあげていたように。
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