やらないことを決めよう。手放すと得られる「時間」と「余裕」

先生の働き方

世界一忙しいと言われる、日本の学校の先生。
やることは山のようにある。ひとつずつ突き詰めると、それこそいつまでも仕事は終わりません。
多忙な毎日ですが、一度立ち止まって自分に問いかけてみて欲しい。
これは本当に、必要な仕事?
子どもたちの為にがんばる先生を応援したい。心身ともに、いきいきと働いて欲しい。
そんな思いで今回は「やらないことを決める」提案をさせてください。


個人差の大きい算数の授業。どう進めたらいい?

数ある教科のなかでも、特に算数は個人差が出やすい教科。塾でどんどん学習を進めている子もいれば、九九がまだ覚えられていない子もいる。
「今日学んだことをドリルで確認しよう」と課題を出すと、ものの数分で持ってくる子、かたや自力で解けず固まっている子。どちらへの対応も困りました。


早く終わった子には、丸つけの手伝いやミニ先生を頼みます。しかしそのうち数が多くなりすぎて「ミニ先生が飽和状態」みたいなことが起こります。


自力で解けずに固まる子は授業時間内に課題が終われない。終わるまで遊べない、頭も疲れたまま次の授業が始まってしまう。それは避けたい。

課題を終わらせないといけない。終わった子への指示もしないといけない。休み時間には次の授業の準備もしないといけない。勝手に「やることがいっぱいだ!」と思い込んでいたのです。
結果「次どうする?」と聞きにくる子にイラっとしてしまったり、手が進まない子を急かすような指導をしてしまったり。


このままではダメだ。どうしたら、子どもたちが達成感を味わえる授業になるだろうと考えました。

何を手放そうか?やらないことを決めてみる

本当にかけたいところへ力を注ぐために、今までしていたことが「本当に必要なのか?」を考えました。
そして、要らない・なくてもいいと判断した事は「やらない」と決めたのです。
どんなことをやめたのか、説明していきます。

プリント作成をやめる

早く終わった子のためにプリントを用意することもありました。しかし、毎日用意するのは大変です。
「プリントを探す→コピーする→人数分印刷する→プリント棚に入れる」という作業が毎日発生するのです。


プリントは使う子もいれば使わない子もいる。置く場所も確保しないといけない。何よりプリントにかかる作業時間がもったいない。
思いきってプリントの用意はやめました。
代わりに、ミニ先生を(最初で定員を決めて)数名お願いし、定員が埋まったら以下の事を子どもたちに提案しました。


・教科書でやらなかった問題を解いてみる(解答を用意しておいて、自分でチェックしてもらう)
・ドリルを進められそうならやってもOK
・教科書のまとめ問題にチャレンジ(大抵後ろのページにある)


全部丸つけ、をやめる

そもそも丸つけを先生がするのはナゼか?
授業で分かって欲しいポイントを、押さえているか確認したい。私の中ではそういう理由です。
なので「ここは先生がチェックする、残りは自分で丸つけして下さい」と仕組みを変えました。

みんな同じ量をさせる、をやめる

「みんな同じ量をさせる」が当たり前だったけれど、それは本当に必要だろうか?と考えました。
ゴールを一律にすることが果たして良いんだろうか。
考えた末、「全部やらないと終われない」もやめることにしました。


例えば「1番、5番、8番は先にやろう。後は時間を見て、できるところまでにしよう」と決めていた子もいました。
「ここまでは終わったね。あと3分で授業も終わりだから、あと1問でおしまいにしよう」と声をかけていた子もいました。
で、休み時間はしっかり休んでリフレッシュ。
飛ばした問題は朝のドリルタイムにやったり、テスト前に戻って解いたりしました。

手放すことで得られた「時間」と「余裕」

色々と「やらないこと」を決めた結果「時間」と「余裕」を得られました。


別な仕事の時間に充てたり、保育園の迎えに余裕を持って行けるようになりました。


ポイントを絞ってチェックすることで、子どもたちが丸つけの為に並ぶ時間も短くなりました。
並んでいるうちにお喋りが始まり「静かに!」なんて、余計な指導もせずに済むようになりました。
支援の必要な子へヘルプに行く時間も作りやすくなりました。
教えることに専念できるので、心の余裕を持って子どもを見る事もできたなと思います。

ゴールを個別に設定することで、子どもたちのストレスも減りました。とにかく終わらせたくて焦って間違えて消してイライラ…がなくなり、集中して問題に向き合えるようになりました。


「それは必要?」と見直す視点、手放す勇気を持とう

とはいっても「やらない」選択は「やる」選択より勇気が必要だったなと思います。


「手抜きじゃないか」「子どもが頑張らなくなるんじゃないか」そう言われたり、見られたりしたらどうしようという不安がありました。
言われたら言われたで、その時考えればいい。何より子どもたちの為にそれがいい方法なら、やらない選択はない。結果メリットの方が大きかったと実感しています。


冒頭にも書きましたが、先生はとにかく多忙です。
ですが日々こなしているその仕事の中には「本当に必要?」という作業や、当たり前のようになってしまっている事があるはずです。
子どもたちがより良く、成長していけるように。
何より先生自身が、本当にエネルギーを注ぎたい仕事をがんばれるように。
ぜひ、手放す勇気、やめる選択をしてみてください。きっと時間と余裕が生まれて、より仕事を生き生きと楽しめるようになります。