もしも、人によって「されて嬉しい褒められ方」が違うとしたら。
あなたはどんな風に、相手を褒めてあげたいだろう。
よく言う「結果でなくプロセスを褒めてあげよう!」が響かない人間が、一定数いる。また、「いいねー!それ最高だよ!天才だなあ」なんて、ダメだと言われがちな大袈裟な褒め方を、喜ぶタイプの人間も存在する。
相手を褒めたい。せっかくなら相手に伝わる、心に響く形で想いを届けたい。ポイントはオーダーメイドな褒め方。相手のタイプに合ったコミュニケーションの仕方、褒め方を工夫してみませんか?
実は私は、褒められてもあまり喜ばないタイプだ。正確には、褒められた理由、根拠によって、喜んだり喜ばなかったりする。
例えば「中間テストの席次、5位以内だったの!頑張ったねえ!」と褒められても、「どうしてそう思うの?」と聞き返してしまいがち。前回より順位が上がったから?それとも、今回のテストは難しかったから?褒めたつもりなのに反応が悪くて、相手も気分を害したろう。今になって思う。
最近美容室に行った、男性の話。彼の感覚は私と似ている。
初めて訪れた美容室で、担当の女性が「◯◯さん、若く見えますよねー」と言ってきた。
なんで?と言いかけた口を必死で押さえる(そもそもケープを巻かれているので、口は押さえられないのだが)。初めましての彼女は、俺のどこを見て、そう思ったんだ?
こんなタイプには、一時期流行っていた「とにかく褒めてあげよう」という方法が、とかく刺さらない。理由もなく褒め言葉を並べられたって嬉しくない。子どものことで悩むお母ちゃんが、「とにかくたくさん褒めてあげよう、と言うから実践しているけど、我が子には効果がないように見える」と相談に来た。で、いろいろ話をしているうちに方法論に走っている自分に気づき、目の前の子どもの感じ方が大事だと、ようやくハッとした顔になる。
そう言いつつも、小学校の先生として働き出したばかりの頃は、私も過程を褒める「よく頑張ったね」的な褒め方が、一番良い!と思ってやっていた。でもその「一般に良い」と言われている褒め方が響かない子は、クラスの半分ほどいた。
もちろん認めてもらえて嬉しい、そうホッとする子どもたちもいた。彼らは褒め言葉と同時に、「ずっと見ていてくれたんだな」という安心感や、相手への信頼を受け取っていた。その状況に気づいて、「万人に効く褒め方なんてないよね」とようやく、個に合わせた声かけの大事さに目を向けるように変わり始めた。
相手のタイプに合わせて、コミュニケーションを工夫する。30人の子どもたち相手にフルオーダーメイドな褒め方の工夫は難しいけど、タイプとして大まかに区切って、それぞれに声かけを工夫することなら可能だ。早速、黒板に貼るネームプレートを3つに色分けして、子どもたちへの褒め方を3タイプごとに工夫してみることにした。
緑に色分けした子どもたち。彼らは結果より頑張った過程を労ってもらいたい。「ずっと集中して取り組んでいたもんね」「お手伝いたくさんしてくれたね」みんなのためにありがとう。そんな言葉かけも、自分がクラスに貢献できていると感じられて、嬉しい。言われた子の頬が緩んだのが良くわかる。ちなみにこの子たちは、「良く頑張ったね」スタイルで褒めて欲しいタイプ。それを褒め言葉として受け取ってくれる。
青に色分けした子どもたち。この子は私と感覚が近い。すなわち、ただ褒めるだけではダメ。成果が出たこと、立てた目標をクリアしたことが、褒められるべき価値のあること。「昨日よりタイムが縮んだね、いいね」「食べるって決めたグリンピース、本当に残さず食べたのね!すごいわ」具体的に、これがすごいって思ってるよ!って声かけが嬉しい。
黄色に色分けした子どもたちには、最初半信半疑で声かけの工夫をやってみた。「天才!」「やっぱすごいなあ」「さすがだよー」こんな感じで、気分を良くするような言葉を選んで伝えてみる。本当にこれでいいんだろうか。彼らは恥ずかしそうな、でも確実に嬉しそうな顔で、「まあねー」と返してくれた。なんと、これでもいいんだ。というか、これが嬉しい声かけなんだ!気分を良くして、テンションを上げてやる、こんな届け方を喜ぶタイプもいるなんて知らなかった。
この工夫をやりだしてから、褒めるのはもちろんのこと、子どもたちとのコミュニケーションが前以上に楽しくなった。こんなことを伝えたい、その想いが、受け取ってもらいやすいように形を変えるだけで、ポーンと相手に受け取ってもらえるようになった。私はもちろん、相手も嬉しい。Win-Winだ。
もちろん根底では、相手との信頼関係が整っていることが大前提。あなたの言葉が相手に響く関係であるか、が大事。相手のタイプに合ったコミュニケーションを工夫して、大切な人とより楽しい関係になっていけたら幸せだなと、私は思う。
登録はこちらから
コメント