書き写すのが遅いのはなぜ?伸びるタイミングで、トレーニングすることの大切さ。

教育

「あれ?なんでこんなに書けないんだろう…」

ある年、小学校の中学年を担任させていただいた時のこと。子どもたちのノートを取るスピードが、あまりにも遅くて驚いた。

子どもたち(実は大人もなんだけど)には、その年齢ごとに、ぐいーんと伸びる能力がある。発達段階に合わせて、というやつだ。

ひたすら書いたり、覚えたり。若干トレーニングっぽいこともある。子ども達にとっては、なんでやるのかな?とか、めんどくさい、嫌だなってことも、あるのかも知れない。

なのだけど、「学びの場所」である学校では、その段階で伸びる力を、繰り返し練習しながら積ませてあげる必要も、あるんじゃないかな。

先生もプロなんだから「嫌なの?じゃあ仕方ないわねえ」とか「時間がないから、そこ飛ばしておこう」とか言うのは、おかしいじゃん、とも思うのだ。

その年のクラスの子達。黒板に書かれたことをノートに書き写すのに、すごく時間がかかる。1人2人だったら分かるんだけど、全体的に遅い。なぜ?

昔見ていた、同じ学年の子ども達と比べても、この歳で、このスピード?っていう違和感ばかりが目についた。

去年の担任の先生方に尋ねていくうちに、理由がわかった。そもそも文章をノートに書き写す、という経験が不足していたのだ。

なんでも、国語の時間に支援員の先生が、プリントを持って来ていたらしい。黒板に書かれたことをノートに書き写さず、それを貼って済ませていた。

「〜することを要約といいます」みたいな、大事な言葉が、国語には度々出てくる。覚えて欲しい大切なことだから、ノートに自分で書いてもらうことがほとんどだ。

でもそれすらプリントを貼り、穴埋めになった場所に、大事な語句だけを書き込むスタイルで、一年学習して来たらしい。ちなみにその支援員さんは今年もいて、同じようにクラスを回り、プリントを配ろうとしていた。

文字を書き写したり、自分の考えをノートに書いたり、というトレーニングを、一般的には低学年の間にたくさんやって来ている。小1の息子も「タブレット全然使わないよ」「うー、漢字たくさん書いて腕がいたーい」とぶつぶつ文句を言っている。

けど、小学校低学年って、鉛筆をちょうどよく握るとか、筆圧を調整しながら書くとか、徐々に量を書けるようにしていくとか。そういう力が伸びるタイミングでもあるのだ。

その後ももちろん、その能力は伸びてくけど、伸びるスピードがすごいのはこの時期。

その、「書き写す」トレーニングが足りていない子ども達が目の前にいる。このまんまで次の学年に上げてしまったら大変だ。

「これから先生が言ったことを、ノートに書いてね。言うことがどんどん増えていくよ。よく聞いてねー」

こんな感じで、一つ下の学年に言うような気持ちで、少しずつ書く練習をした。

私より早く書き終えたら勝ちだよ!とか、全然意味のない言葉(こちなかべろん、みたいな)を私が言うから、聞き取って書いてごらーん!とか、おふざけしながらトレーニングをした。

ちなみに、脈絡のない言葉を聞き取るって意外と難しいのです。大人もなかなかできないです。

2ヶ月くらい頑張っただろうか。その頃には、この学年の学習が問題なくできるまで、子ども達の書くスピードも上がった。

他のクラスの先生方もあれ?と思っていたようなので、去年の事情をお伝えしながら、みんなで書く力のトレーニングを頑張った。

学校って、側から見れば「デジタル社会の今、なんでそんなことするの?」みたいな活動もあると思う。けど実は、発達段階的に今、ちょっと力入れて頑張ろう!みたいな、意図があることをやってるはず。

この取り組みには、どんな意図があるのかな?という問いを、まずはちょっと立ててみて欲しい。

納得いかないなら、担任の先生に尋ねてみるのもひとつだろうしね。

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