言いにくいことを指摘してくれる人は、あなたにとって貴重な存在です。

先生の働き方

大人になって、「そこは変えた方がいいよ」と言ってくれる人って、そんなにいない。厳しさの中に愛を持って関わってくれる存在って、有難い。

あなたには、そんな人がいるだろうか。

栃木県で、中学の学校栄養士をしていた時のこと。その時ご一緒した理科の先生は、なんというか、沖縄っぽい雰囲気をお持ちの方だった。

担任も持ち、小さな学校で理科専科も1人だけ。全学年の授業を受け持ち、テニス部の顧問でもあり、…絶対に忙しかったはず。

なのにせかせかしているのを見たことがなかった。いつもゆるっとしたオーラをまとっていて、「俺、毎日給食が楽しみなんだよー。今日のメニューなんだっけ?」と軽いノリで声をかけてくれた。

先生は給食のことだけでなく、沖縄のことにも興味を持って色々喋りかけてくれた。私も先生からいろんな話を聞いた。ブラジルの日本人学校に家族で赴任した時の話なんかは、とっても面白かった。

「アマゾン川ってあるでしょ?濁ってて、底が見えないのね。一回泳いだけど、その後、具合さ、悪ぐなっちゃってさあー」

栃木県北のずーずー訛りで聞く、先生が見てきた世界の話は、すごく私をワクワクさせてくれた。

給食室では片付けの際に、クラスごとの食缶の残り具合を確認する。先生が担任のクラスは、他のところと比べていつも残菜が少なかった。

もちろん、良く食べる子の多いクラスは、お残しも少ない。けれどクラスの雰囲気だったり、先生のカラーにも大きく影響を受ける。

楽しく食べられてるとか、おかわりいるー?と聞いてくれてるとか。実は食缶から、クラスの様子が透けて見えたりする。

先生のクラスは、きっと雰囲気も楽しいし、おかわりの声かけもしてくれている。そんな感じがする。大抵、空になって返ってくる食缶を見て、そう思っていた。

そんな先生のクラスで、一度だけ大量に残菜が出た日があった。

「沖縄の料理もメニューに取り入れてみたい」と、私が出した「もずくスープ」が原因だった。

沖縄では結構良く見る料理なのだが、県外で、もずくを酢の物以外にして食するなんて…。しかも、麺の代わりにもずくが入ってる汁物は、見た目も真っ黒。みんなびっくりしたんだろう。どのクラスも、もずくスープが大量に残されていた。

担任の先生と一緒に、生徒達が食缶を給食室に戻しに来る。みんな微妙な顔をして、「ごちそうさまでした…」と去っていく。栄養士さんを目の前に、美味しくなかったとは言えないよね。ごめんね。

「いやー先生、今日のスープはびっくりしたわー!前もってどんな料理か教えてくれたら、子ども達も怖がらずに食べられたかもしんないよー」

そんな中、いつものように飄々と、理科の先生が声をかけてくれた。そうだよな。栃木の郷土料理を食べる時、どんな味なのか分からないと、ちょっと怖いもの。

「そうですね、ありがとうございます」ちょっと凹んでいたので、そう答えるのが精いっぱいな私。

「ま、次は沖縄そばでも出してよ。楽しみにしてるから」

私の肩をポンと叩いて、先生は教室へ戻って行った。

調理員さんもきっとどこかで「子ども達、これ食べるかな?」と疑問を持ってたはず。けど、誰も何も言わなかった。

子どもならまだしも、大人になったら、言いづらいことをわざわざ言ってくれる人っていない。

だから先生が「次はこうしたらいいよ」と言いに来てくれたことは、私にはとても有り難かった。

自分の年齢的にも、そろそろ誰かを助けてあげる番だよな。そんなことをよく思う。

実際は毎日の子育てや、まだ若干慣れない茨城での生活に、自分で手いっぱいな状況だ。情けない…。

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