正義の刃は、本当に正しい方向を向いているんだろうか。

教育

せっかく、図書館をゆっくり回ろうと思ってたのに…。

つい、読みふけってしまった。

あっという間に一時間。託児タイムが終わってしまった。(泣)

東野圭吾さんの小説。とても好きで、一時期よく読んでたんです。

容疑者Xの献身とか、白夜行とか、ドラマや映画になった作品も、たくさんありますね。

今日たまたま目の前にあったのは、「さまよう刃」という小説でした。

娘を殺されたお父さんが復讐に駆り立てられる、読んでも爽やかにはなれないお話なのですが。

小説のクライマックスに出てくる、この一節。読むたび、胸にグサっと刺さるんです。きみはどうなんだ?って問いかけられてるような。

自分たちが正義の刃と信じているものは、本当に正しい方向を向いているのだろうか。

向いていたとしても、その刃は本物だろうか。本当に悪を断ち切る力を持っているのだろうか。

東野圭吾「さまよう刃」より抜粋

小学校の先生になりたての頃。

自分の中に作られた「正義の刃」を、子ども達に向かって、振り回していた事がありました。

平たく言えば、「遅刻はしちゃいけない」とか。

「授業中はみんなと同じように、課題に取り組まないといけない」とか。

それが当たり前でしょう?みたいに、疑いもなく信じてたんですよね。

それは本当に正しい方向を向いているのだろうか?

確かめることもせずに。

ある年、担任を受け持ったクラスにいた女の子。

「ちょっと落ち着きはないけど、元気で明るいいい子だよ!」

前の担任だった先輩にそう聞いていたので、初めの頃は「ホントだなぁ…」くらいに眺めていました。

けれど徐々に、授業中に課題をやらなかったり、大声を上げて授業を妨げたり。困った存在に変わっていってしまったんです。

どうして彼女が、そんな反抗的な態度を取るんだろう。勉強についていけなくて、イラついてるのかな。

私が彼女を叱る回数だけが、どんどん増えていきました。

詳しくは忘れてしまったのですが、彼女が授業中にスルッと教室を抜け出して、大騒ぎになったことがありました。

「つまんないから、外出てこようかな」

みたいな事を、聞こえよがしに言うんです。

取り合ってしまったら、聞いてくれたと彼女は喜んでしまう。彼女と私とのやり取りで、クラスのみんながほったらかしになってしまう。

前にそんな対応をして上手く行かなかったので、聞いているけど取り合わない。そういう風にしたんです。

そうしたら本当に、出ていってしまった!

今考えたら、小さい子がお母さんの気を引きたい時、する事と一緒なんです。

やっちゃうよ、いいの?

子どもの目はしっかり、お母さんを見てる。

「お母さん、見てる?ワタシのこと、見てる?」って、しっかり確認してる。

彼女は私の注意を引きたかった。甘えたかったんだよね。

彼女が廊下にいない!と気づき、クラスの子たちを教室で待たせたまま、慌てて靴箱へと階段を降りていきました。

そうしたら、靴箱の前で、理科専科の先生と彼女が立っていました。

たまたま手の空いていた先生が、「校舎の裏門の前で座り込んでたんだよ」と、彼女を連れて来てくれたところでした。

私を困らせて、人にまで迷惑かけて。何してるのよ!

湧いてきた怒りを、私はきつい口調で、そのまま彼女にぶつけてしまいました。

「あなた、なんでそんな事ばかりするの!一体、先生にどうして欲しいの?」

「…みんなみたいに、やさしく叱ってほしい!」

予想してない答えが返ってきて、びっくりしました。

彼女の態度も予想外でした。わたしの目を見てる。目を離さないんです。ホントにそうして欲しい。心からのお願いだったんだな。

「…じゃ、ちゃんと授業受けようよ。そうしてくれないと、私も優しくできないよ。」

彼女、どんな表情をしてただろう。

思い出せないけれど、彼女の態度は結局変わりませんでした。

自分のお願いが私に届かなかった、悲しさや虚しさの現れだったんでしょうね。

私の中には「正義の刃」がありました。

しっかりやれている子には、優しくできる。

そうでない子には、優しくできない。

こちらのお願い(授業を妨害しないで欲しい)を受け入れてくれない子のお願いは、聞けない。

「みんなみたいに、優しく叱って欲しい」

彼女はこんなに分かりやすく、リクエストしてくれてたのにね。

私は「正義の刃」をふりかざして、彼女のお願いを叩っ斬ってしまった。

あなたにも、「正義の刃」だと信じきって、疑わなくなってしまっているものが、ありませんか?

それは本当に、正しい方向を向いているのかな。

立ち止まって考える、心の余裕が欲しいですね。

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